センサと知覚の入口。点検のセンサは「運び方」ではなく「何を測るか」で選ぶ

センサと知覚の入口。点検のセンサは「運び方」ではなく「何を測るか」で選ぶ

第1回で、Physical AIを認識・状態・判断・行動・学習の環として描きました。今回はその入口、認識のいちばん手前にある「センサ」を一段ずつ降ります。

現場で「どのセンサを使うか」という話は、しばしば「ドローンか、ロボットか、カメラ車か」という運び方の話にすり替わります。しかし運び方は、センサの本質ではありません。センサの本質は、何の物理を測るかです。可視光を受けるのか、光の往復時間を測るのか、温度を読むのか。ここが違えば、見つかる欠陥も、崩れる条件も、まったく変わります。

そしてもう一つ。どのセンサも、出てくるのは「絵」や「点」です。それはそのままでは寸法になりません。ひび割れが0.2mmなのか0.3mmなのかは、撮った距離とレンズ、そして較正が決めます。今回は、六つのセンサ原理と、絵を寸法に戻す標定・較正までを、物理までさかのぼって扱います。

センサは「何を測るか」で選ぶ。運び方ではない

国の制度が、この点を構造で示しています。国土交通省の点検支援技術性能カタログは、技術を七つのカタログに分けています。画像計測、非破壊検査、計測・モニタリング、そしてデータ収集・通信。分類の軸は「何を計測する原理か」です。

七つのカタログの名前を見ても、ドローン、ロボット、カメラ車という言葉は一つも現れません。では運び方はどこにあるか。標準項目の「3.運動性能」という諸元のなかです。そこで初めて、飛行型、接触型、アーム型、懸架型という「型」が現れます。近接して静止したときの位置の収束(飛行型のみ)、進入できる最小断面、可動範囲、移動しながら測るときの測位誤差。運び方は、分類ではなく、諸元として問われています。

これは制度が「そう述べている」という主張ではありません。カタログの目次と標準項目の構造から読み取れる、構造の指摘です。運び方は手段であって、測る物理が目的だという構造が、国の分類にそのまま出ています。

ついでに、よくある誤解を一つ外しておきます。カタログの技術名を数えると、画像計測(橋梁)の91技術のうち、名称にドローン系の語を含むものは27件でした。これは「ドローンを使う技術が27件」ではありません。名称に現れないだけの技術がありえます。数えられるのは、あくまで名前に語が含まれるかどうかです。

では、その「測る物理」には、どんな種類があるのか。

光と距離を測る、六つの原理

センサを、測る物理で六つに分けます。それぞれ、原理、測れるもの、崩れる条件、点検での使いどころの順で見ます。

点検で使う六つのセンサ原理。測る物理・metric可否・屋外耐性・限界の対比(LiDAR 点検 サーモグラフィ)

可視カメラ 安いが、距離を持たない

可視カメラは受動センサです。世界から届く光を受けるだけで、自分からは何も投げません。だから安く、解像度が高く、色と模様を細かく写します。ひび割れの見た目、錆の色、漏水の跡。表面の状態を読むには第一の道具です。

弱点は、距離を持たないことです。一台のカメラの一枚の画像からは、物の絶対的な大きさが原理的に決まりません。同じ写り方をする「小さくて近い」と「大きくて遠い」を区別できないからです。加えて、明るさに対する制約もあります。暗い場所では、素子に届く光子の数が減り、そのゆらぎ(ショットノイズ)が信号に対して相対的に大きくなる。露光を伸ばせばブレ、絞りを開ければ被写界深度が浅くなる。写真に写ったひび割れが何ミリかは、この一枚だけでは言えませんし、暗所ではそもそも輪郭が沈みます。

ステレオ 二つの目で、三角形を作る

人が両目で奥行きを感じるのと同じ原理です。少し離した二台のカメラで同じ点を撮ると、その点は左右の画像で少しずれた位置に写ります。このずれを視差と呼びます。視差が大きいほど近く、小さいほど遠い。幾何は単純で、深度Zは、焦点距離fと二眼の間隔(基線)Bと視差dから、Z=f・B÷dで決まります。

ここには二つの落とし穴があります。一つは対応づけです。左右のどの画素が同じ点かを見つけられないと、視差が計算できません。のっぺりした無地のコンクリート面や、白飛びした面では、対応点が取れずに深度が抜けます。この対応づけを、小さな窓で似た模様を探すブロックマッチングや、画像全体で滑らかさを効かせる半大域マッチングで解きます。もう一つは、精度が距離とともに急に悪くなることです。上の式を距離で微分すると、深度の誤差は距離の二乗に比例して増えます。近ければミリ単位で測れても、遠ざかると同じ視差の誤差が大きな深度の誤差に化けます。基線Bを長くすれば遠くまで粘れますが、二眼が離れるほど装置は大きくなり、共通して見える範囲も狭まります。

ToFと構造化光 自分で光を投げて測る

能動センサです。ToF(タイム・オブ・フライト)は、変調した光を投げて、返ってくるまでの時間や位相のずれから距離を測ります。構造化光は、既知の模様を投げて、その模様が対象の凹凸でどう歪むかから形を起こします。どちらも自分で光を出すので、無地の面でも距離が取れます。

弱点は二つ。外の光に弱いことです。太陽光には自分が投げる光と同じ波長が大量に含まれるので、屋外の直射下では信号が埋もれます。そして位相を使うToFには、測れる距離に折り返しがあります。変調の一周期より遠い点は、近い点と同じ位相に見えてしまう。角や光沢面では、光が複数の経路を通って返る多重反射が距離を狂わせます。得意なのは屋内や近距離で、屋外の構造物全体を測るには向きません。

LiDAR レーザーの往復で、点群を作る

パルス状のレーザーを飛ばし、往復の時間から距離を測ります。これを高速に走査すると、空間が点の集まり、点群になります。カメラと違い、点群は最初から実寸を持ちます。屋外でも正確な寸法が取れるので、構造物の形、たわみ、出来形を測るのに向きます。

原理に関わる性質をいくつか。走査の仕方には、鏡を機械的に回す方式と、MEMSミラーや光の位相で向きを変える固体方式があり、後者ほど小型で振動に強くなります。一発のパルスが複数の面から返ることもあり、その多重の反射を読み分けると、手前の障害物の奥にある面まで拾えます。返ってくる光の強さ自体も、面の反射率の手がかりになります。波長は一般に二系統で、905nm付近は安価ですが太陽光の影響を受けやすく、1550nm付近はアイセーフで高い出力を出せます。弱点は、点が疎なことです。カメラの画素のようにびっしり埋まってはおらず、細いひび割れのような微細な模様は点の隙間に落ちます。雨や霧や粉塵の中では、レーザーが途中で散乱して精度が落ちます。LiDARは形を測るのは得意でも、ひび割れの幅を読むのは苦手だということです。

熱画像 温度で、内部を透かす

熱画像は、対象が出す赤外線を受けて温度の分布を写します。使う波長は、人の目に見える光よりずっと長い、およそ8から14マイクロメートルの帯です。この波長を受けるマイクロボロメータという素子で、面の温度を絵にします。

点検で効くのは、表面の下を透かせることです。コンクリートの内部に浮きや剥離があると、そこは熱の伝わり方が変わるので、日射や気温の変化に対して表面温度が周囲と違う速さで動きます。この差が、浮きや漏水として絵に出ます。読むときの注意が二つ。一つは、これは熱のコントラストがあって初めて見えることです。曇りで温度差が乏しい時間帯や、対象が周囲と同じ温度に落ち着いているときは、内部に異常があっても表面には出ません。だから熱画像は、いつ撮るかが結果を左右します。日射や気温変化を待つ受動的なやり方に対し、外から熱を与えて反応を見る能動的なやり方もあります。もう一つは、絵に出る温度が、面の放射率に左右されることです。同じ温度でも、つるつるの金属とざらざらのコンクリートでは出る赤外線の量が違う。温度そのものを数値で語るなら、放射率を踏まえた較正が要ります。

超音波・打音と、イベントカメラ

光では表面までしか見えません。表面の下の空洞や剥離、鋼材の減肉を捉えるには、弾性波を使います。超音波を当てて反射までの時間から深さを読む、板の中を伝わる導波で広い面を探る、あるいは打撃を与えて音の違いを聞く打音検査です。健全な部分と剥離した部分では、叩いたときに返る音の高さが変わります。接触や打撃が要るので面的な速さは出ませんが、光の届かない内部を直接探れます。

新しい系統として、イベントカメラにも触れておきます。普通のカメラが一定間隔で全画面を撮るのに対し、イベントカメラは画素ごとに明るさが一定量変わった瞬間だけを、マイクロ秒の時間分解能で非同期に出力します。動きのブレに強く、明暗差が百デシベルを超える場面にも強い。高速で動きながら撮る、逆光とトンネル出口のような極端な明暗が混じる、そうした場面での取得に向く芽があります。

どのセンサも、測る物理が違えば見つかるものが違い、崩れる条件も違います。一つで全部は測れません。

狙う欠陥で、組み合わせが決まる

だから選び方は、運び方からではなく、狙う欠陥の物理から決まります。表面のひび割れの幅を読むなら、近接して較正した高解像度の可視カメラで、LiDARは向きません。逆に、桁のたわみや変位、断面の出来形といった形を測るなら、実寸を持つLiDARの点群やステレオが効きます。コンクリート内部の浮きや剥離は、表面には模様として出ないので、熱の伝わり方の差を読む熱画像か、叩いた音の違いを聞く打音・弾性波に回します。漏水や湿潤は、水が蒸発するときに熱を奪って表面温度を下げるので、熱画像が拾います。鋼材の腐食は、外観を可視カメラで、残った板厚を超音波で、と役割を分けます。塩分によるかぶりコンクリートの劣化のように、光では表面までしか届かない対象には、電磁波や電気化学を使う非破壊検査が要ります。国が直轄国道で活用を原則化した項目にも、塩化物イオン量の計測がそのまま並んでいます。

一つで足りないなら、重ねて使います。重ねるときには、それぞれのセンサが世界のどこを向いているかを対応づける、センサ間の外部標定が要ります。カメラの画素とLiDARの点を同じ座標に載せられて初めて、色のついた点群になり、形と模様を同時に語れます。撮る時刻もそろえなければなりません。動きながら測るなら、カメラの一枚とLiDARの一走査が、どの瞬間の同じ姿勢に対応するかがずれると、重ねた像は二重になります。融合は、それぞれの弱点を別のセンサで埋める代わりに、標定と同期という手間を新たに背負う選択です。

画素から物理寸法へ

ここからが、今回の核です。センサが出すのは絵や点です。点検の判断に使うには、それを寸法に戻さなければなりません。「ここにひび割れがある」の先の「幅0.2mm」を出すのが、この段階です。

距離の測り方。ステレオの三角測量とToF・LiDARの飛行時間(深度カメラ ステレオ 三角測量)

標定 カメラの癖を、数値で捕まえる

レンズには癖があります。同じ物でも、画面の端では歪み、中心とは違う写り方をします。この癖を数値で捕まえるのが標定です。捕まえるのは二種類のパラメータです。

内部パラメータは、レンズとセンサ自身の性質です。焦点距離、画像の中心にあたる主点、そしてレンズの歪みの係数。歪みは、放射状に伸び縮みする成分と、レンズと素子のずれから来る成分に分けて数値化します。外部パラメータは、そのカメラが世界のどこに、どちらを向いて置かれているかで、回転と並進で表します。三次元の点は、この内部と外部をまとめた行列を通って、画像の上の一点に射影されます。標定とは、この行列を逆算する作業です。

実務では、格子模様の板をいろいろな角度から撮り、板の上の既知の点が画像のどこに写ったかを手がかりに、パラメータを一括で最適化します。良し悪しは、求めたパラメータで三次元点を画像に投影し直したとき、実際に写った位置とどれだけずれるか、その再投影誤差で測ります。この誤差が画素の何分の一かに収まって、初めて標定できたと言えます。標定なしの画素は、癖のかかった絵のままで、寸法の話には乗せられません。

スケール不定 絶対の大きさは、どこかから借りる

単眼のカメラには、根本の制約があります。一枚の画像は、世界を相似のまま縮小したり拡大したりしても、同じように写ります。だから絶対的な大きさが、画像だけからは決まりません。これをスケール不定と呼びます。複数枚から形を起こすときも、事情は同じです。写真だけから復元した形は、全体を何倍にしても矛盾しない。倍率の自由が一つ、必ず残ります。

スケールは、外から借りるしかありません。二眼の基線の長さ、既知の寸法の基準物、あるいは距離を直接測るセンサ。どれか一つがあって、初めて絵に実寸が入ります。近年は一枚の画像から奥行きを推定する技術も進みましたが、そこで出るのは多くが相対的な奥行きで、絶対値はやはり別の手がかりから与えます。点検で「幅何ミリ」を語るなら、スケールをどこから借りているかを、いつも意識する必要があります。

GSD 一画素が何ミリかが、検出の下限を決める

絵を寸法に戻すとき、最後にものを言うのが一画素の実寸です。地上分解能、GSDと呼びます。おおまかには、画素ピッチと撮影距離を掛け、焦点距離で割った値です。遠くから撮れば一画素が受け持つ実寸は大きくなり、近づけば小さくなります。

一画素が受け持つ実寸(GSD)が、検出できる最小のひび割れ幅を決める(画素 ひび割れ 検出下限)

これが、検出できる細さの物理的な下限になります。国の性能カタログ案は、こう書いています。「1pixelの長さ未満のひび割れ幅は検出はできず、1pixelの長さに切り上げて算出される」。つまり、一画素が0.3mmを受け持つ距離から撮れば、0.2mmのひび割れは0.2mmとしては出てきません。存在しても、一画素分に切り上がります。しかも、一画素はあくまで理論上の床です。ひび割れがくっきり一画素幅で写るとは限らず、レンズのぼけや対象との角度で像は数画素ににじみます。幅を安定して読むには、床ぎりぎりではなく、対象が数画素にわたって写る距離まで寄る必要があります。

数字で感覚をつかんでおきます。仮に素子の画素ピッチが数マイクロメートル、レンズの焦点距離が数十ミリだとすると、一メートルほど離れて撮ったときの一画素の実寸は、おおむね数十分の一ミリの桁になります。ここはあくまで桁感をつかむための例で、実際の値は機材ごとに変わります。要点は、0.2mmを測りたいなら、それが数画素に写る距離まで寄る必要があり、その距離はレンズと素子から逆算できる、ということです。

ここに、避けられないトレードオフが出ます。細いひび割れを読むために寄れば、一枚に写る範囲は狭くなります。橋一面を同じ細かさで撮ろうとすれば、枚数が増え、時間がかかり、後で継ぎ合わせる手間も増える。逆に、広く速く撮ろうと引けば、一画素の実寸は粗くなり、細いひび割れは床に沈みます。分解能と視野は同時には得られません。だから取得の計画とは、狙う欠陥の細さから必要なGSDを決め、そこから撮影距離とレンズ、そして枚数と経路を逆算する作業になります。運び方をどうするかは、この逆算のいちばん最後に来る話です。

だから「AIがひび割れを何ミリまで検出できるか」は、モデルの賢さの前に、どの距離から、どのレンズで撮ったかで、上限が決まっています。ここを外すと、検出の議論が宙に浮きます。カタログに載る性能値も、この点で読み方が要ります。性能値は「開発者が想定した条件下で独自に算出した理論値又は試験値」であり、共通条件で比較できる標準試験値とは別物です。数字を見るときは、どちらなのかを確かめる習慣が要ります。

取得の設計は、再現性の設計

センサと標定がそろっても、まだ足りません。点検は一度で終わらず、五年後にまた撮ります。そのとき前回と比べられなければ、劣化の進行は語れません。だから取得の設計とは、再現性の設計です。国の参考資料が、この思想を具体的な手順で書いています。

較正の流れ。24色カラーチャートとクラックスケールで色と最小ひび割れ幅を確認する(点検 較正 キャリブレーション)

較正は二本立てです。色については、24色のカラーチャートを画面に入れて撮り、合成の前後でRGB値がずれていないかを確認します。ひび割れの太さについては、0.05、0.1、0.2、0.3、1.0ミリメートルという既知の太さが印刷されたクラックスケールを対象に貼って撮り、加工の前後で目視できる最小のひび割れ幅を確認します。そのうえで、近接目視の結果と突き合わせ、検出できたかどうかを◎○△×の四段階で記録します。撮って終わりではなく、どこまで見える条件で撮ったのかを、証拠として残す設計です。

もう一つ、機械を入れると現場の作法が変わる例があります。参考資料は、機械が検出したひび割れに「橋梁診断員…は手を加えない」と定めています。人が良かれと手を入れると、客観性と再現性が壊れるからです。ところがアルゴリズムによっては、点検者が現場で引くチョークの線をひび割れと誤検出することがあります。そこで資料は、こう指示します。「チョークをひびわれとして検出する恐れがある場合には、写真撮影後にチョーキングを行う」。人が長年やってきた作業の順番が、機械の性質に合わせて入れ替わる。取得の自動化は、撮り方だけでなく、現場の手順まで設計し直す話だということです。

実際の研究でも、同じ面を時間を追って撮り、ひび割れの進行を並べています。下は、コンクリートのひび割れを複数の時点で撮影し、その変化を追った例です。初期の細く薄いひびが、時間とともに太く濃く育っていくのが見て取れます。

可視カメラが撮ったひび割れを、時間を追って並べた例。初期の薄いひびが太く育つ(点検 ひび割れ 経時変化)

出典:Harb et al. "Multi-temporal crack segmentation in concrete structures using deep learning", arXiv:2411.04620 (2024) Fig.5(CC BY 4.0)

そして、比較の居場所も、制度はすでに用意しています。点検の成果品を納めるフォルダの構成には、06_SONSHOUPHOTOZという名前の場所があります。中身は、前回点検時の損傷写真です。合成前の生写真を納品し、時期を変えて別のソフトでも合成できる保存方法にしたがう、とも定められています。写真は径間や部材ごとに分けて格納します。

ここが、第1回で置いた三条件の第二、世界の状態を持ち続けることに、そのままつながります。要領は「前回と比較せよ」とまでは求めていません。それでも、前回の写真を置く場所と、後で再現できる形式は決まっている。第二条件の居場所は、制度の側にすでに空けてあるのです。センサで正しく撮り、標定と較正で寸法に戻し、前回と同じ形で残す。この一続きがそろって初めて、次の段階、状態として覚えておくことが成り立ちます。

UAV搭載LiDARが捉えた建物屋根の点群(区画ごとの対地高度つき)。距離を測るセンサの生データ

出典:Chodura, Greeff & Woods "Evaluation of Flight Parameters in UAV-based 3D Reconstruction for Rooftop Infrastructure Assessment", arXiv:2504.02084 (2025) Fig.1

おわりに

センサは、運び方ではなく、何の物理を測るかで選ぶ。可視カメラもステレオもToFもLiDARも熱画像も、超音波や打音も、測る物理が違えば、見つかる欠陥も、崩れる条件も変わります。国の制度が技術を運搬手段ではなく計測原理で分類しているのも、同じ理由からです。

そして、どのセンサの絵も、そのままでは寸法になりません。標定でレンズの癖を捕まえ、スケールを外から借り、GSDが検出の下限を引く。一画素の実寸より細いひび割れは、モデルの賢さ以前に、原理として写らない。だから、取得の設計とは、再現性の設計です。較正で見える条件を証拠に残し、機械の出力に手を加えず、前回の写真を決まった場所に残す。第1回で置いた第二条件の居場所は、制度の側に、すでに用意されています。

次回は、この絵と点を空間に組み上げる段階、三次元再構成を扱います。複数の写真から形を起こすSfMから、NeRF、そして3Dガウシアンスプラッティングまで、点検で使える幾何をどう作るかを掘り下げます。


本記事は「Physical AI 点検・保全 講座」シリーズの第2回です。次回は、三次元再構成と空間の獲得を扱います。スライド資料(PDF)は無料でダウンロードいただけます。

出典

  • 出典:Chodura, Greeff & Woods, "Evaluation of Flight Parameters in UAV-based 3D Reconstruction…", arXiv:2504.02084 (2025) Fig.1
  • 国土交通省 道路局「直轄国道における点検支援技術の活用原則化」活用を原則とする項目【橋梁】(塩化物イオン量計測を含む)
  • 国土交通省 道路局「橋梁・トンネル 点検支援技術 性能カタログ」第1章・標準項目付録(令和8年5月/一覧 令和8年3月)
  • 国土交通省 報道発表「点検支援技術性能カタログを拡充」(2026年4月1日)
  • 国土交通省 道路局「道路橋定期点検要領(技術的助言/解説・運用標準)」(令和6年3月)
  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「オルソモザイク画像の生成と保存に関する参考資料(案)」(令和4年3月)
  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「機械等によるひびわれ図の生成に関する参考資料(案)」(令和4年3月)
  • 児玉祐一「道路トンネル定期点検における点検支援技術の導入促進」建設機械施工 Vol.76 No.5(2024年5月)
  • Harb, Achanccaray, Maboudi, Gerke "Multi-temporal crack segmentation in concrete structures using deep learning"(arXiv:2411.04620, 2024)Fig.5 ※図はCC BY 4.0で利用
  • センサの計測原理・カメラ標定・GSDは工学の一般的事実に基づく(特定製品の性能値は含まない)

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